ちいさな花が教えてくれるもの


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 どんなに辛くても、心が悲しみでふさがっていても、花や自然に感動する心が残っているなら、きっと歩き出す勇気もわいてきます。



●心が動かなくなるとき

 生きていくというのは楽ではありません。楽しいことも多いけれど、大きな悲しみや辛いことに出会うこともあります。


 ときには、とうてい乗り越えられそうにないような出来事にさえ出会います。


 そうした辛い体験や大きな悲しみで、心が動かなくなったり、心を閉ざしてしまうのが「うつ」です。


 十数年前のことですが、私の学生時代の同級生だったある女性は、事故で最愛の娘さんを亡くし、悲しみのあまり「うつ」になりました。

 うつというのは、外からの強い刺激、たとえば、その女性のように、突然訪れた大きすぎる悲しみを受け止めることができなくなって、心が動くことを止めてしまうことをいいます。


 といっても、それは特別なことではありません。


 もともと私たちの心には、抱えきれない強い悲しみなどから心を守るために、感情の動きに歯止めがかかるような働きがあるのです。

 そうすることで、悲しみや辛い体験から心が守られるしくみを誰もが持っています。ただ、人によっては、喜びや感動といった感情も感じることができなくなってしまうことがあります。

 強すぎる悲しみや辛い体験がもとで、何を見ても心が動かなくなってしまう。それがうつです。


●もしも、ともに泣いてくれる人さえいたなら…

 けれど、人はどんなに強い悲しみに出会っても、それだけで心が壊れたり、うつになったりすることはありません。その大きな悲しみをともに悲しみ、ともに泣いてくれる人がいれば、心はずいぶん救われます。


 多くの場合それは、人生のパートナーであったり家族や友人です。なかには、ペットの存在が大きな支えになったという人もいます。けれど、そうした悲しみや辛い体験を分かち合える人が、いつもそばにいるとは限りません。


 私のその友人は、シングルマザーとして、ひとり娘を何よりも大切に育てていました。溺愛していたといってもいいかもしれません。

 だから、大切なものを奪われたショックと、思いを分かちあえるパートナーでもあった娘さんがもういないという二重の辛さに、心が耐えられなかったのでしょう。


 学生時代から写真という共通の趣味があったことから、一緒に自然の中を歩くことも多かった彼女ですが、うつになり、通院の日以外は、神戸の実家から一歩も出ない毎日が続いていました。

 私はもともと、山深い農村で生まれ育ったこともあり、野山やそこに咲く季節の花などの自然が与えてくれるものの大きさも厳しさも体で知っています。


 だから、彼女がそうした状態になってから、ずっと自然の中に連れ出したいと考えていました。

 もちろん、そうすることで彼女の悲しみが消えるとか、癒やされるとか思ったわけではありません。ただ、自然の中に身を置くことで、止まってしまった心がほんの少しでも、動き出すきっかけがもらえるかもしれないと思ったのです。


 そんななか、けしてほめられた行動ではありませんが、彼女を無理やり車に乗せて、六甲の山に連れだしたことがあります。春とはいえ、まだあちらこちらに雪の残る寒い頃のことです。


たんぽぽの花

 それまで何も話さず、無表情に、ぼんやりと窓の外を眺めていた彼女が、ひとこと「もう咲いてるね…こんなに寒いのに」といったのです。窓の外には、ところどころに黄色いたんぽぽの花が、小さく咲いていました。数年ぶりに、彼女が外の世界に心を開いた瞬間でした。

 この日を境に、少しずつ彼女は、自分の感情を外に向かって表すようになりました。

 もちろんそれは、いちばんに、お医者様やカウンセラーの方の尽力があったからのことですが、後に彼女は、そのときのことをこんなふうに話してくれました。


 「たんぽぽがほんとうに愛おしく思えた。寒いのにがんばったねって。そう思ったとき、自分も、立ち直らなきゃって思った」


 彼女の心の中で、どんな変化が起きたのか、正確なところは私にもわかりません。

 でも、まちがいなく小さく咲いていたたんぽぽの花が、彼女の心にきっかけを与えてくれたのだと私は思っています。


 もしもあなたが、自分の気持を理解してくれる人がいなくて悩んでいたり、悲しみを分かち合える人がいなくて心を閉ざしているのなら、ぜひ、いちど自然の中に身を置いてみる時間を作ってみてください。(後半へ続きます)


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●もしもあなたがそうなら…

 もしもあなたが、自分の気持を理解してくれる人がいなくて悩んでいたり、悲しみを分かち合える人がいなくて心を閉ざしているのなら、いちど機会を作って、自然の中を歩いてみてください。

 近くでもかまわないから、緑の美しい場所に出かけて、自然の中に身を置いてみてください。

 そこには、あなたをうるさく責めるものなど何もありません。そこにあるのは、あなた心をそっと休ませてくれる、緑や風の匂いや花たちです。


●ちいさな花が教えてくれるもの

 たとえ、心に深い悲しみが横たわっていても、花を見て美しいと感じたり、愛らしいとあなたが感じることができるなら、きっと大丈夫。

 花や自然に感動する心が残っていれば、それをきっかけにして、心が動き始めます。歩き出す勇気もわいてきます。

 ちいさな花に心を開くことができるなら、今はむずかしく思えても、いつかきっと人と分かり合うこともできるようになります。そういう人と巡りあう日がやってきます。

 だから、悩みがあってもいい。心が何かでふさがったままでもいいから、ときには、外へ出てみましょう。自然の中を歩いて、緑にふれてみましょう。季節の野の花に目を留めてみましょう。


 そこには、あなたをうるさく責めるものなど何もありません。

 そこにあるのは、あなたの心をそっと休ませてくれる、緑や風の匂いや花たちです。

 花や自然に触れる時間を意識して作ってみてください。そこに身をおけば、自然に心が動き始めます。きっと歩き出す勇気もわいてきます。


 最後まで読んでくださいまして、ほんとうにありがとうございます。あなたの心から望む幸せが、一秒でも早く叶えられますように。

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